BOOKBOX|「言葉は料理をおいしく引き立てる」青野亜希子






専門の料理は何ですか?

フランス料理とイタリア料理です。

料理家になろうと思った動機、きっかけは?

もともとは食べることが好きで、20代前半はジャンルを問わず、いろいろなものを食べていました。

しばらくすると、気に入ったお店が決まってきて、自分の好きな味というものがわかってきたんだと思います。

その過程で、自分がおいしいと思った料理は、どういう風に作られているんだろう、何が元になってこんなおいしいものになっているんだろう、という疑問や探究心がわいてきて、とある料理教室に通うようになりました。

思えば、その教室との出会いが、1つの転機ともいえるのですが、もともと辻調理師専門学校の講師をされていた方の教室ということで、経験に基づいた、確かな技術と知識で展開される授業は、自分の知りたいと思っていたことを知る上で最高の環境でした。

一方で、知れば知るほど知らないことの多さに気づき、料理教室に通い始めて2年ほどたった頃でしょうか、「知りたい」という気持ちは、このまま一生消えそうにない、と思いまして、そこから本格的に、どういった形で料理と向き合っていきたいか考え始めたように思います。

厨房で働くということも考えたのですが、頑固で融通がきかない性格もあって、自分のやりたいことを自分のスタイルでできる、このスタイルに至っています。


ワインエキスパートの資格もお持ちですね。お好きなワインは?

まだまだ国・品種に限定して、これが好きだ、といえるほどに、たくさんのワインを飲んでいるわけではなく、好きなワインも、その時々で変わってきましたが、最初に飲んだワインはなぜか覚えていて、ドイツのシュヴァルツカッツという、ブルーのボトルに黒猫のエチケットが印象的な、甘みの強いものでした。

それからは外で食事をすることが増えたように思えます。お店の方に勧めていただいたフランスやイタリアなどのワインをよく飲んでいたと思います。その中で、ボルドー、ブルゴーニュという一般的な流れを経て、今では南フランスやアルザスあたりにいます。

特に南のものは、土地柄をよく映した、温かさと果実味があり、それだけで飲んでも、お料理と合わせてもおいしい柔軟性のあるワインだと思います。

地域とは別になりますが、自然派ワインも最近気になっています。独特の味わいと香りの面白さ、翌日あまり残らないというありがたさも手伝って、これから飲む機会が増えそうですね。個人差があるとは思いますが。

料理教室を開くそうですね。どんな教室になりそうですか?

「ビストロ」・「ブラッスリー」という言葉も浸透し、昔ほどではなくなってきましたが、
フランス料理は、高級な、肩肘張った料理、というイメージをもたれている方も、まだまだ多いかと思います。

でも、日本に割烹・懐石(会席)などがあり、一方でおばんざいなどに代表される家庭料理があるように、フランス料理にも、前者にあたるハレの食事と言われるものと、ごく質素な普段の食事があります。

中でも、私が教室で知っていただきたいと思っているのは、後者の、いつもの食卓に選んでもらえるような料理です。

ご自身でも作って、新しい発見やアレンジを楽しんで、まわりの方にも喜んでいただく。ごく当り前のことですが、そんな幸せな相乗効果が生まれるようなきっかけを作ることができたらと思っています。

イメージでいうなら「ビストロ」でしょうか?
温かく、居心地のいい、そんな教室にできたらと思っています。

フランス料理のレシピに、違和感を持っていらっしゃるとか。
具体的に、どのようなことですか?

調理法の表現でしょうか。
たとえば、日本語の「焼く」に対応するフランス語には、いくつか言葉があって、それぞれイメージされる状態が少しずつ違います。

イメージが沸くように訳そうとすると、いくつか言葉をつなげる必要があるのですが、そうしますと文章としては長くなってしまう。共通する記憶や共有できる環境があればもっと言葉は少なくてすむのですが…。

教室を持ちたいのは、そういったもどかしさを取り除きたいからでもあります。

お料理を文章で表現する場合、どんなことに気を使っていますか?

これも先程の話に共通しますが、状況が伝わるように表現すること。あとは、なぜそうなるのか、どうしてそうするのか、ということを知ってもらうことでしょうか。

理由がわかると応用が効くようになるので、より幅が広がると思います。
最終的にはその人が感覚的・視覚的に理解しないとつくれません。
なので、まずはその助けになるような文章を、と思っています。

WASEDABOOKに何を期待しますか?

かくいう私もそうですが、最近レシピを本でなく、webを使って調べる方がとても増えてきました。

デバイスもPC だけでなく、スマートフォン、ipadなどと多様化するなか、カスタマーもまた今まで以上に、webを活用していくことが容易に想像できます。料理の世界でも自分自身を発信できる場所をweb上にもつことは不可欠だと思っていました。

そんな折、縁あって「wasedabook」というスペースを提供いただき、大変感謝しています。カスタマーと自身をつなぐ接点として、この場所を有意義なものにできればと思っています。