BOOKBOX ライティングの未来形




媒体道具進化論

自分のメディアを持つことはもう当たり前、HPやブログ、ツイッターだって誰でもカンタンに作れる。
書かなければ自前のメディアは完結しないし、素敵なウェブライフはやってこない。
だけどテキストって厄介だよね、ひとつひとつ意味があって。





ライティングはWebを作ることと変わらない

Webを作るように文章が書くことができたら、もっと自由になれるかもしれない。
Webクリエイターに、Webとテキストの違い、Web制作上のライティング技法などについて聞いた。

■Webクリエイターとして

どのようなものを制作していますか

私のお客様は個人事業主の方や中小企業の方がほとんどですね。ビジネスの規模は大きくないですが、どんなお客様も専門知識やノウハウをお持ちですから、それをユーザーに届けるお手伝いをするのが私の仕事だと思っています。

最近では、お客様が自分でページの編集や追加の作業が行えるよう、CMSを使ってサイトを構築することが多いです。更新作業が簡単になるので、今までよりも積極的にホームページを使った情報発信に取り組めるようになります。

自分でもいくつかサイトを運営しているんですが、最近はこんなものをやっています。
http://nutella300.com/
nutella(ヌテラ)というチョコレートスプレッドのレシピサイトです。


web以外にもいろいろな媒体を手掛けていらっしゃいますね
「テキスト」をどのように見ていますか

紙媒体とWeb媒体との違いは、まずスピード感があるというところでしょうか。

ケースバイケースだと思います。平凡な考え方かもしれませんが、テキストはコンテンツなわけですから、コンテンツを伝える、またはコンテンツが表現する場所を提供するのが媒体の役割です。

ただし、もう少し遠くからそれを見てみると、テキストという小さなコンテンツの集合体たる媒体もまた、大きなコンテンツと言えるわけで。そうなると、テキストと媒体は運命共同体のようなものかもしれません。


媒体の種類によって「テキスト」の取り扱いは変わりますか

そうですね、利用する媒体の性質にあわせて、どんな表現方法が相応しいか常に考えています。

Webの場合は、数種類のメディアを使って、それぞれの特性を活かしつつ、また補完しつつ、クロスメディアな表現を行うこともできます。

例えばTwitterを使って素早い情報配信をすると同時に、ブログにはもっと詳細な情報を用意しておき、ユーザーの理解を深める、という感じです。


「テキスト」と記号や映像との関係や効果については、いかがでしょうか

10数年前までWebはテキストと静的画像が中心のメディアでしたが、現在では動画、音声、コミュニケーションツールなど多数の要素が入り混じる複雑な構成で成り立っています。

それらがどのようなバランスでできているかというと、それはそのサイトの目的やポリシーによって流動的に変わります。かならずしもテキストが主軸にならないケースも少なくなく、テキストとその他の要素が協力しあい、Webサイトという大きなひとつのコンテンツになったところで、最大限の効果が引き出せる方法をいつも考えています。


テキストの取り扱いでは、どのような工夫をされていますか

Webサイトは、検索エンジンのキーワード検索によって、ユーザーに発見されるという性質があります。そのため、検索エンジンを意識したテキストの最適化(SEOと呼ばれます)を念頭においた表現表記がもとめられます。

これには専門的な技術や知識が必要になります。しかし一般的には、こういった専門的なテクニックを駆使する前に(するよりも)、ユーザーにわかりやすいタイトル付け、セクション分け、充実した情報の提供、ユーザーの参考になるリンク貼りなど、ユーザー目線の編集を行うことが大切です。そうすることにより、自然と検索エンジンに評価してもらいやすいサイトすることができます。


制作上、どのような「テキスト」状態が好ましいですか

Webという環境では、様々な誘惑的な要素に取り囲まれた、非常に移ろいやすい思考のなかでテキストと向き合いますので、ある種、独特の表現技術がもとめられます。

たとえば文章の導入部分に関していえば、結論をもったいぶらずに、最初に開示してしまう方が良いでしょう。Webの読者は、どんな結論に達するか分からない文章に、のんびりと付き合ってくれる性質の人々ではありません。

Webのテキストを読む環境は、現状では決してリーダブルなものとは言えませんので、だらだらと続いていく長文は好ましくないでしょう。趣旨が明瞭で、簡潔な文脈が小さなセンテンスで区切られたテキストが読んでもらいやすいです。


■webライターとして

ご自身でもライティングをされていますね

現在は基本的にWebのメディアを中心に執筆しています。
当ウェブマガジンの「電子出版事情」や村上春樹・太宰治の「ウォーカーシリーズ」が私の記事です。


媒体の種類によってライティングの技法や文体、書く内容自体も変わってきますか

媒体を持つことの意義や価値は人それぞれだと思うので一概には言えませんが、現代人の多くは毎日必ずインターネットをしますよね。

日本だけでも9000万人の利用者がいるそうです。例えば、ブログで1つの記事を書くだけで、Twitterで一言つぶやくだけで、9000万の人(世界を含めればもっとですよね)にリーチできる個人メディアなんて他にありませんよね。

何か多くの人に届けたいことがあるとか、知ってもらいたいことがあるとか、そういうことを望んでいる人には、これ以上ないくらいの利用価値があるはずです。


ブログも立ち上げていますね

阿佐ヶ谷日乗』というもので、自分の住んでいる阿佐ヶ谷を中心に、地域密着型でWebの仕事をしたいと思っています。そこで、地域のみなさんへの自己紹介というか、阿佐ヶ谷にWebの仕事をしているこういう人がいますよ、ということをアピールするために、阿佐ヶ谷という町をテーマにしたブログを立ち上げようと思いました。

阿佐ヶ谷のお店や人気スポットを紹介した記事には、地元の方や以前阿佐ヶ谷に住んでいた方などから、たくさんのコメントをいただいています。阿佐ヶ谷を代表する地域ブログとして、一定の認知をしてもらっているみたいです。


Twitterでは主に何を書いていますか

主にクライアントや仕事仲間向けに、自分のスケジュールを配信しています。私はフリーランスで仕事をしているので、その日によって1日の動き方が異なるため、現在自分が何処で何をしているのか、つぶやくことで、お客さんや仲間たちが、自分に連絡を取りやすくなるんじゃないかと思っています。


媒体によって書く技法や文体、内容自体も変わってきますか

Webのメディアに関していえば、ブログにしろ Twitter にしろ、多くのユーザーは情報収集やビジネスツールとして利用している場合が多いため、それに応えられる内容のほうが歓迎されると思います。

例えばブログで日記を書くものいいんですが、そこに地域情報や商品紹介、本や映画の感想などを含めた方が、多くの人に読んでもらえる機会が増えると思います。

今後は、自分の媒体で発信していくことが当たり前になっていきますね

なにか自分の表現をしたいとか、世の中に発信したいことがある人には、ぜひ自分の媒体を持つことをおすすめします。

そしてそれがWebであれば非常に簡単に実現できます。
もちろん一定レベルの知識は必要ですが、従来のメディアとは比べ物にならないくらい低コストで運用でき、伝達速度・範囲も上回っています。

個人的に注目している媒体は、Webサイトのなかでも、特に個人が見えるサイトですかね。Web2.0というムーブメント以降、不特定多数のユーザーがコンテンツ作りに参加するサイトやサービスが目につくようになりました。こういったものは、その時の私たちには新鮮で画期的だったと思うんですが、今の私にはすっかり面白味がなくなってしまいました。

ユーザー参加型のコンテンツは魅力的だし、大切だと思うんですが、どうも傾向として、そっちのほうに偏りがちになって、運営者のポリシーみたいな軸の部分がやせ細ってしまっているような気がするんです。

これからはもっと個人が見えるサイトやサービスを楽しみたいと思っています。運営者や開発者の考えや姿が現れているもの、ユーザー参加型でなくても、運営者の味が出ているオリジナリティー溢れるサイトがもっと見たいですし、私自身もそういうものを作っていきたいです。