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電子出版事情

第4回 目的にあった電子出版のかたち



前回、一般的な個人が自分ではじめることのできる電子出版の種類について書いた。今回は、その中から自分にあった電子出版の選び方について書いてみようと思う。

まず個人が電子出版をやってみようと思うには、その人なりの理由や目的が必ずあるはずである。純粋に自己表現するためか、書籍を販売して収益を上げたいのか、それとも自社製品を売るためのマーケティングの一環か、あるいはセルフブランディング、またはステータスのためか。その理由や目的は、人それぞれだろう。

電子出版にはたくさんの種類があり、人が電子出版をやろうと考える理由や目的にも多くのケースが存在する。そこで今回は、電子出版をはじめる動機ごとに、どのような電子出版の方法が適しているか、検討してみようと思う。


●自己表現のための電子出版
あなたが自分の書いた小説やエッセイを、何らかの方法で発表したいと考えているとする。お金儲けをするつもりもなく、できるだけ多くの人に自分の作品を届けたい、ということであれば、電子出版は大いに使える。そして様々ある電子出版のなかでもこの場合、メールマガジンが最も適した方法だろう。

メールマガジンは誰にでも無料で簡単に電子書籍を配布することができ、利用者も非常に多く、社会的認知度も高いため、たくさんの人に読んでもらえるチャンスがある。メールマガジンは、基本的にはパソコンで読まれるのが一般的だが、書籍の内容(若年層向けのもの、ケータイ小説のようなもの)によっては、携帯電話向けのメールマガジン配信業者を利用するほうが良いかもしれない。

メールマガジンは、もちろん電子書籍として捉えることもできるが、言ってしまえばただの電子メールである。作者にとって書籍を出版したという実感は薄いかもしれない。もっと書籍としての実感を望むのであれば、各種電子書籍リーダーに対応したフォーマットで書籍を配布するのが良い。

例えば、電子書籍販売サイト「でじたる書房」で電子書籍を発行すれば、専用リーダーで、紙の書籍と同じような感覚で、ページをめくったり、しおりを挟んだりして読書をしてもらうことが出来る。これならば電子書籍を発行したという実感も得られるのではないだろうか。

●収益を得るための電子出版
自分の書いた電子書籍を販売して収益を上げたいと考えた場合、もっとも手軽で効果的な方法は、やはりメールマガジンになるだろう。数100円の価格をつけてマールマガジンを発行すれば、購読者数に応じた報酬を得ることができる。例えば、1冊300円の価格をつけたメールマガジンを100人が購読したとすると、週1回の発行だとして月額12万円程度の売り上げになる。

「でじたる書房」などの電子書籍販売サイトを利用する方法もあるが、メールマガジンほどの利用者数がいないため、他の場所で自ら告知するなどしない限り、購入者を増やすことは難しいと思われる。

また、メールマガジンが短いサイクルでコンパクトな情報を切り売りするのに対し、電子書籍販売サイトは、ある程度まとまった文量を整理してパッケージした状態で販売している。価格はどちらも数100円と差がないため、購読というかたちで継続的に料金を徴収できるメールマガジンのほうが、利益追求型のシステムとして向いていると言える。

英文の書籍であれば、アマゾン・キンドル向けのストアーに作品を登録して販売することも可能だ。英文を読むことのできる世界中のキンドルユーザーにリーチすることができる。

●マーケティングとしての電子出版
自社の商品やサービスを売るために、マーケティングツールとして電子書籍を利用しようとする人もいるだろう。

例えば、あなたがスポーツ自転車販売店のスタッフだったとする。そこであなたが持つ、商品やメンテナンス方法などの専門知識の一部(全ての知識を出し尽くす必要はない)を、メールマガジンや電子書籍販売サイトで配布してみてはどうだろう。

電子書籍を読んだ読者が、その内容に興味を持ち、あなたのお店で自転車を買いたいと思うかもしれない。最終目的は自分のお店に足を運んでもらうことなので、電子書籍を有料で販売して利益を追求する必要はない。無料で配布し、できるだけ多くの人に読んでもらい、内容に興味を持ってもらうことが、この場合における電子書籍の役割である。

●ブランディングとしての電子出版
自分の持つ専門知識を電子書籍にしたため、それを広く配布することで、その業界内での自分の存在感を高めることもできるだろう。この場合、前項の「マーケティング」と 異なるところは、書籍の内容に出し惜しみをしてはいけない点だ。読み手に自分の知識や技術を十分に知ってもらい共感させないと、ブランディングの成功にはならないからだ。

配布方法については、自分のホームページやブログのなかで配布すると効果的だろう。自分自身を表現する個人メディア内で電子書籍を配布すれば、より深く自分の考え方を知ってもらうことができる。メールマガジンや電子書籍配布サイトを利用しても良いが、自分のメディア内でもしっかりとアピールするべきだ。

値段については、そもそも書籍の売り上げで収益を出すことを目的としていないので、無料にしてしまっても良いが、あえて数100円の価格をつけ、その書籍に(ひいては自分自身に)一定の価値を与えるのも良いと思う。もちろん中身が値段に釣り合う内容でないと、読み手をがっかりさせて自分の信用を無くすだけなので注意しなくてはいけない。


このように、その人の目的次第で、電子出版を展開する方法は変わってくる。もっとも将来的に、圧倒的に普及する方式が登場すれば選択の必要性はなくなるだろうが、現在の日本においては様々な電子出版方式が乱立しているのが現状である。各々、自分の目的に相応しい方法で電子出版に取り組まれることをおすすめする。


小林聡(こばやし・さとし)
フリーランスのWebプロデューサー兼ライター。ファブズラボ代表。
東京都杉並区阿佐ヶ谷を中心に活動する。中小企業や個人のサイト制作や運営を軸に、インターネットユーザーに価値あるコンテンツを提供するべく、健全なWeb活動にこだわって仕事をしている。趣味は読書と自転車。好きな作家は夏目漱石、愛車はサーリー。

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